香川の西の端、観音寺市の有明浜海水浴場は、2㎞に渡って続く白浜と遠浅の海が特徴の海水浴場です。銭型の砂絵で有名な琴弾公園に隣接し、約3000本の松林との景観も見事です。
実は、有明浜は全国的に見ても海浜植物の宝庫で、ここでしか見ることのできない貴重な海浜植物の群生を見ることができます。観音寺市の天然記念物にも指定されています。というわけで、先日ラジオカーの取材で、有明浜の海浜植物を長年研究されてきた方にお話を伺ってきました。
お話を伺ったのは「香川の水辺を考える会」の代表、吉田一代さんです。観音寺市出身で有明浜の近くで育った吉田さんにとって海浜植物のある景色は日常。自然と興味、関心が向かっていったそうです。ちょうど訪れたとき、砂浜には海浜植物のハマゴウの群生がひろがり、薄い紫色の花が目を楽しませてくれていました。ハマゴウは落葉低木。幹は砂上を這い、ところどころから根を下ろします。吉田さんから「匂ってみて」と言われ顔を近づけると、葉や実から良い香りが。昔はこの実を集めて枕を作る風習があったそうで、そんな話を吉田さんに教えていただきました。確かに、安眠効果が得られそう。ほんのりラベンダーのような香りでした。こんな風に海浜植物が生活と身近な存在だったのですね。ちなみにハマゴウは紫色が一般的ですが、有明浜には珍しい白花もあるそうです。
有明浜には25種類の海浜植物が自生しています。ウンランのように香川県内では有明浜にだけ確認されている希少種もあります。実はこのうち1/3近くは環境省のレッドリスト(絶滅危惧)に指定を受けるような貴重なものばかり。上の写真の「ネコノシタ」は絶滅危惧Ⅰ種に指定されている希少な海浜植物です。葉の表面がザラザラしていて猫の舌に似ていることから命名されたそうです。茎は砂上を這って伸び砂浜を覆うように生育し、黄色のかわいらしい花を咲かせます。
「絶滅しないためにどうしたらよいのか?」とお聞きするも、囲ったり別のところに保護をする、ということがあまり海浜植物に関しては意味がないそうで、今のところ「浜辺の環境バランスを崩さない」ことが最善の策だそう。また「人間も一回や二回程度踏まれたぐらいではどうってことないけど、何回も踏まれたらへこたれるでしょう」と吉田さん。踏み荒らさない大切さをユーモアたっぷりに教えてもらいました。また吉田さんは、有明浜の海浜植物の現状などを地元の子供たちに教える活動も15年近く続けていらっしゃるそうです。
「まずは知ること」の大切さを痛感しました。
有明浜へ海浜植物の観察にぜひお出かけください。